ひとン家

思い返せば、人の家に住むことが多かった。
まず、東京へ上京した時からしてそう。
同郷の先輩の家へ転がり込んだ。
3ヶ月くらいで仕事を見つけ出て行くつもりが、気づけば1年半くらい住んでいた。
小さな1Rだった。

次に引っ越したのは、通っていた暗室の隣の部屋だ。
向かいの部屋はワークショップの教室で、週末には誰かがやってきて一緒にご飯を食べることが多かった。
逆に平日は誰も使わないのでアパートの1フロアが貸切状態だった。
一人暮らしではあったけれども、「自分の部屋」というよりも「隣の部屋」という感覚はずっとあった。
同じ敷地内で大家さんも生活していて、とてもよくしてくれていたのでちっとも孤独を感じたりすることはなかった。
部屋にはお風呂も洗濯機置き場もなかったけど、水道代は大家さん持ち。
気付けば6年も住んでいた。
引っ越すタイミングを完全に失っていたところ、老朽化による建替えで引っ越さなければならなくなった。

そんな中でフランスへ行くことにした。
「それが一番ウケる」と思ったから。
我ながらバカバカしくて良い。

フランスに来てから4軒ほど、人の家に住んだ。
リヨンの家族向けマンションの一室。
アルルの中心地にあるアパートの一室。
アルルの中心街から少しはなれた一軒家。
それから、人口130人の村にある一軒家。
どこも家の人が留守の時に住むことが多かったので一人暮らしのようなものだったが、みな同じようなことを言う。
「Comme chez toi」
=あなたの家のようにすごしてね(って感じ)

今は5軒目、知人の知人の家の隣人の所に住んでいる。
出会って二ヶ月の私を二週間も面倒を見てくれている。
あんくわいやーぶる。

お礼になるのかわからないが、明日は親子丼をふるまう予定。
親子丼の意味を説明したら、とてもショックをうけていたけれど……。

10月1日 21:22